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【エントリー作品の詳細説明】
小倉百人一首LODは、全国各地の図書館に所蔵している古典籍の画像データと翻刻データなど、小倉百人一首に関連する情報を提供するデータセットである。LODチャレンジ2017においてデータセット部門最優秀賞を受賞し、以後、英語翻訳資料、音声データ、葛飾北斎の浮世絵画像など関連のデータの追加を実施してきている。これまでのデータは、藤原定家が編纂した「小倉百人一首」の和歌百首をもとにした作品である。一方で、「百人一首」には「異種百人一首」といわれるジャンルが存在する。これは、小倉百人一首の影響を受けて後世に作られたもので、小倉百人一首とは異なる和歌や狂歌をあつめたものである。今年度のエントリー作品では、それらの中から蔦屋重三郎が刊行した狂歌の異種百人一首2点を対象としてLODのデータセットを作成した。蔦屋重三郎(1750―1797)は、江戸時代中期(安永・天明・寛政)に活躍した版元である。2025年にNHK大河ドラマで蔦屋重三郎を主人公とした『べらぼう』が放映されたことをうけ、LODチャレンジ2025の応募作品とした。
LOD化した2作品は異種百人一首というジャンルの特徴をあらわした2種を選んでいる。
・『道外百人一首』は元の小倉百人一首のもじり(パロディー)となっているものである。このようなもじり系の異種百人一首は『犬百人一首』『どうけ百人一首』『新選戻理道外百人一首』『蜀山先生狂歌百人一首』など、数多くみられる(参考文献:武藤禎夫『江戸のパロディーもじり百人一首を読む』東京堂出版, 1998)。
本作品は刊記に「天明四甲辰正月 耕書堂 江戸通油町 蔦屋重三郎板」と入っており、絵は山東京伝が描いたものと言われている。元の和歌を踏まえた内容であるため、語彙にkaruta:isParodyOfを追加して、元の小倉百人一首LODの和歌リソースとリンクを形成した。
・『古今狂歌袋』は、戯作者の宿屋飯盛(石川雅望)が、当時、流行していた狂歌を百首選んだものである。巻末に「書肆 東京本町筋北エ八丁目通油町 蔦屋重三郎梓」と入っている。ほとんどが元の小倉百人一首とは関係なく、あるテーマに沿った作品を百点集めたというパターンであり、これも、異種百人一首の一つの典型である。ただし、このパターンの場合は、LOD化した時に、元の小倉百人一首LODにリンクできる先があまり無いという問題点がある。『古今狂歌袋』の場合、元の小倉百人一首を踏まえた作品は2首のみであった。
【作成したデータ】
新規作成データ
・異種百人一首LODのリスト:https://linkdata.org/work/rdf1s10403i
・道外百人一首(東京都立図書館所蔵):https://linkdata.org/work/rdf1s10404i
・古今狂歌袋(国立国会図書館所蔵):https://linkdata.org/work/rdf1s10405i
修正したデータ
・小倉百人一首かるたデータ https://linkdata.org/work/rdf1s6834i
※ hasParody に異種百人一首へのリンクを形成した。
【データモデル】
LinkData.orgでは、入れ子のRDFを書けないため、従来の小倉百人一首LODと同様に、今回のエントリー作品も複数のファイルに分割している。まず、異種百人一首のリストを作成し、書誌のリソースを設定した。また、それぞれの作品については、個々の和歌(狂歌)をリソースとして設定している。書誌のリソースと個々の和歌のリソースはdcterms:isPartOf、dcterms:hasPartで相互にリンクしている。
今回の作品では、独自語彙として、karuta:isParodyOfとkaruta:hasParodyを追加した。例えば「田子の浦に打出でてみれば白妙のふじの高嶺に雪は降りつつ」という小倉百人一首のリソースから「足袋のうらに踏みつけみればいたづらな瓜の種をば包みおきつつ」と「田子の浦にうち出てミれはそのゝちの宝永山も雪ハふりつゝ」のリソースにkaruta:hasParodyのリンクを形成するような要領である。逆向きのリンクがkaruta:isParodyOfとなる。もじり系の異種百人一首のデータを増やしていけば、同じ和歌から多様なパロディー作品が楽しめるようになる。
※なお、2020年時点での小倉百人一首LODのデータモデルは「小倉百人一首 LOD のデータモデル設計と構築」『情報の科学と技術』2021 年 71 巻 8 号 p. 376-381( https://doi.org/10.18919/jkg.71.8_376 )で公開している。
今回追加した語彙も含めた最新の語彙の一覧は、小倉百人一首のLODの解説サイト (https://karutalod.web.fc2.com/ogura.html)で確認できる。
【IIIFの活用】
本作品で対象とした2点の古典籍は、見開きに複数の狂歌が掲載されているため、IIIF(International Image Interoperability Framework)のImage API技術を使って、当該の狂歌にのみリンクしている。くずし字が読めない者にとっても、IIIFによる画像の切り出しが行われているため、間違いなく対応関係がわかるようにした。なお、小倉百人一首LODのIIIF対応に関しては、LODチャレンジ2018でLinkData賞を獲得している。(https://idea.linkdata.org/idea/idea1s2623i)
【既存オープンデータの活用】
小倉百人一首LODは、各地の図書館でオープンなライセンスを付与して公開されている古典籍の画像データを、リンクすることで、新しい発想でのデータの活用が可能になることを示している。今回の作品は、国立国会図書館のオープンデータとともに、東京都立図書館のオープンデータも活用した。東京都立図書館の所蔵資料は、ライセンスもパブリックドメインと明示されており、東京都立図書館のサイトでも公開されている。さらに、同じデータが国文学研究資料館のIIIFを使って提供されていたため、画像位置を特定することが可能であった。データを流通させることで、活用の可能性が広がることを示している。
【独自性・発展性】
小倉百人一首には、遊びとしての知名度・人気があり、かつ和歌研究にも膨大な資料的な蓄積がある。異種百人一首についても、膨大な作品があり、小倉百人一首だけではない、テキスト(内容)の面白さを味わうことができる。今回は2作品だけだが、蔦屋重三郎が刊行した本の中から、典型的なパターンを2つ抽出した。今後、異種百人一首のデータを増やしていけば、その時代の流行や背景などを理解することができるような、広がりがある素材である。
更新: 2026年1月24日
(Nanako Takahashi)

